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お菓子の缶の乙女 

先日の読売新聞、書評欄に、懐かしい乙女画が載っていました。
丸みを帯びた独特な体のラインに、節目がちで幻想的な雰囲気を漂わせた表情。その巧みな描き方で、誰の作品かすぐにわかります。

東郷青児

その名前を知らずとも、その作品に触れたことがあるという方は多いでしょう。
私の記憶の中にある東郷青児の絵は、子供の頃によく見た、洋菓子店「フランセ」の缶に描かれたもの。記憶が定かではないですが、確か楕円形の缶の蓋に、目を引く美しい女性の顔が描かれていて、中にはクッキーが入っていたような…?絵の記憶が鮮明なわりに、缶の中身、どんなお菓子が入っていたのか、その記憶が不思議なことに、全くといっていいほどありません。
東郷青児は、これ以外にも、洋菓子店の包み紙や本の表紙、化粧品など、様々なものに美人画を描いていたそうで、その作品を集めて一冊の本にしたこちら、

東郷青児 本東郷青児~蒼の詩 永遠の乙女たち」が書評欄で紹介されていたのです。
さっそく取り寄せました。

彼の描く乙女画が、これだけ印象に残っていながら、今まで、東郷青児その人に関する伝聞を一度も耳にした記憶がありません。本に載っていたプロフィールを見て、
1897年に鹿児島で生まれたこと、
少年時代には竹久夢二の下絵描きをしていたこと、
作曲家 山田耕筰からヨーロッパの新しい美術運動を学んだこと、
フランス留学の経験があること、
ピカソや藤田嗣治らと交流があったこと、
1978年に亡くなったことなどを知りました。

そして、本の中で紹介されている作品は、他にも、彼がプロデュースした喫茶店「ボア」(吉祥寺/'07閉店)の店内の写真、そこで使われていたイラスト付きの紙ナプキンやマッチ、ケーキのしおりなど。それから、東郷青児コレクターが始めた喫茶店「ソワレ」(京都・四条木屋町)店内に飾られた油彩・水彩画や、線画があしらわれたタンブラーなど。
さらに、手がけた作品は絵に留まらず、エッセイや漫画作品…。マリー・ローランサン展の図録に掲載された「ローランサンの思い出」などは、非常に興味深い内容でした。

本を頭からきちんと読むのではなく、パラパラとページをめくり、これ!と思ったページを開き、作品を見たり読んだり。そんな読み方をしています。

抜粋したものが掲載されていたエッセイ集「カルバドスの唇」以外にどんな本を執筆していたのだろうとamazonで検索してみたところ
 ・こちら東郷青児の関連本

想像もしてみなかった作品を見つけました。

ジャン・コクトーの「怖るべき子供たち」の翻訳を手がけていたのです。

子供達角川文庫の「怖るべき子供たち」、我が家の本棚を探してみたら、ありました。美人画家のあの東郷青児が翻訳したものだったとは!

ちなみに、この文庫の表紙の絵は、氏のものではありません。池田満寿夫 画。
「東郷青児~蒼の詩 永遠の乙女たち」を再び手に取り、装丁本を紹介しているページをめくると、東郷青児が装丁した「怖るべき子供たち」(白水社)が載っていました。意外にも、とてもシンプルなデザインで、使っている色も地味。
これは、彼がこの本を読んで感じた印象を、反映させているようです。
ならば、私だったらどんな装丁をこの本に施すか?そんなことを考えながら「怖るべき子供たち」をもう一度読んでみようと思います。
 ・参照損保ジャパン東郷青児美術館
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2009年のお正月~その2 

2009年のお正月~その1の続きです。

歌舞伎の市川猿之助さんが舞台演出を手がけたリヒャルト・シュトラウスのオペラ
影のない女影のない女」のDVD、あったにはあったのですが、日本語の字幕は出ないようです。 ドイツ語、英語 は当然として、イタリア語、フランス語、スペイン語まで用意されていながら、このオペラが上演された日本の言語、日本語による字幕がないなんて、おかしくないですか?オペラのDVDを買う人ってそんなにも少ないのでしょうか?日本では馴染みのない演目ゆえに、販売ターゲットから始めから日本ははずされているのか?どうも合点がいきません。

まぁとにかく、DVDが存在したわけですから良しとして、購入することにしました。国内発送の場合よりも新品のインポートの方が安いので、そちらを選択しました。

家に届いたのが、2009年1月1日。年賀状を除いては、今年初めての郵便物となります。
両親が実家へ年始参りに出かけた2日、たっぷりと猿之助版「影のない女」を堪能しました。

そうそう、昨年中に、ある程度のストーリーを把握しておいた方が良さそうだということで、下のサイトに載っていたあらすじをプリントアウトして、読んでおきました。
 ・こちらオペラ座の夢の夜

冒頭で、登場人物たちの歌舞伎を彷彿とさせる衣装を見て、「やはりこういうことになったか」と、一瞬残念な気持ちになったのですが、見慣れてくると、登場人物と衣装との違和感を感じなくなってきて、むしろこれ以外の衣装では考えられないと思えるほど、登場人物の特徴や人格との一致を感じとりました。(登場人物の全てが歌舞伎風衣装というわけではありません。)

字幕ですが、イタリア語で見ることにしました。ベタで字幕が出ているわけではなく、要所要所、コンパクトに出てくるので、歌詞の意味を
100%理解できないことに多少苛立ちを感じた部分もありましたが、字を目で追う時間が短い分、演者の表現力:表情や細かいしぐさまでしっかりと見ることができ、また、どんな意味なんだろうかと想像しながら歌を聴き、曲相からR.シュトラウスの意図を推し量り、あっと言う間の3時間でした。

以前の記事シチリアの騎士道~その3 の中で、
「オペラをテレビで見る場合、飽きてチャンネルを変えてしまうことがしばしば。いや、ほとんど」
と書きましたが、今回は内容がいいため、しっかり集中できました。

演者の中では、乳母を演じたマルヤナ・リボウシェク(Marjana Lipovšek)の歌声と演技に釘付けとなりました。後半では、それまで乳母の言いなりだった皇后が、一転、自分が石になってしまってもいいと腹をくくってから、その皇后を演じたルアナ・デヴォル(Luana DeVol)のアリアに圧倒されました。

舞台の演出に関しては、皇后の影の有無(影のない女とは皇后の事です)をきちんと見せられる様工夫され、照明の巧みさを感じました。最後、金色の布が波打ち、かと思うと一瞬にして橋のある美しいシーンに変わり、二組の夫婦の幸せな姿が影と共に浮かび上がり、今までの薄暗い世界から光の世界、愛や幸福感に包まれた世界への場面転換が見事で、素晴らしかったです。圧巻の舞台でした。

そして、カーテンコール。観客達の拍手や「ブラボー」の掛け声を聞きながら、私自身も拍手をせずにはいられませんでした。


さて、2日に「影のない女」を観た後、何と3日と4日には、12月23日にBSで放送されていた「まるごとプッチーニ」、録画しておいたものを観たんです。

お正月、いつもは面白くも無いテレビ番組を、だらだら見ながら過ごすのですが、一年の初めに良質のオペラを鑑賞するというのは、すがすがしい気分になって、とてもいいことだなって思いました。
 ・関連記事文は人なり、文は演技なり
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演劇学問・文化・芸術

2009年のお正月~その1 

新年あけまして、おめでとうございます。今年も、よろしくお願いします。

さて、昨年2008年末、私はあることを初めてやりました。一般的には、「大したこと」ではないでしょうが、今までやったことがなかった身としては、どんなことであれ、記録しておく価値のある出来事なんです。

その初めてとは、


DVDソフトを購入した。

です。
なぁんだ、そんなこと。とは思わないでくださいね。今まで買うことのなかったDVDソフト、買いたいと熱烈に思ったことの無かったDVDソフトを、私がわざわざ買ったということは、それだけで小さな事件です。

どんなDVDソフトを買ったのか?映画?音楽?それとも?
何故買ったのか?
それを今回の話題にしようと思います。


12月、私は一冊の本と出合いました。
音楽を仕事に音楽を仕事にして」。この本は、メトロポリタン・オペラをはじめとする海外の歌劇団や世界の著名なクラシック演奏家を招聘するなど音楽マネジメントを専門にする音楽事務所 ジャパン・アーツの創始者 中藤泰雄氏が上梓したもので、ジャパン・アーツ誕生秘話に始まり、今までの軌跡をたどりながら、出会った指揮者や演奏家らとの心温まる交流や、手がけた日本発の音楽事業の紹介、さらに、音楽の専門的な教育を受けていない氏が、どのような生い立ちで、音楽とどのような接点を持ってきたかを語るなど、氏の類まれな音楽体験の足跡を綴ったものです。
 ・関連記事グッバイ ロシア、そしてこんにちは~その2

普段目にする耳にするCD制作、販売、アイドル発掘などとは異なる音楽業界の、世界を舞台にした音楽マネジメントの話は非常に新鮮で、興味深く、また、世界的に有名なテノール歌手 プラシド・ドミンゴ(Plácido Domingo)や今は亡きピアニスト リヒテル(Sviatoslav Teofilovich Richter)の素顔を知るに至っては、彼らの演奏・歌声を改めて聴き直してみたいと思うほど、この本から音楽的刺激を受けました。

さて、この本の中で、1992年11月の愛知県芸術劇場のこけら落とし、バイエルン国立歌劇場によるオペラ「影のない女」(台本:ホフマンスタール、作曲:リヒャルト・シュトラウス )の来日公演の経緯が語られていました。当時バイエルン国立歌劇場の総監督であった指揮者のウォルフガング・サヴァリッシュ(Wolfgang Sawallisch )さんから、日本での公演を希望しており、しかも「影のない女」を、日本人の演出家による新たな作品として上演したいという意向が伝えられ、最終的に
舞台演出:市川猿之助(スーパー歌舞伎のあの方ですよ)
舞台美術:朝倉摂
衣装:毛利臣男
照明:吉井澄雄 ほか
 の日本側スタッフと、ドイツのバイエルン国立歌劇場によるドイツオペラ上演が実現したのです。

市川猿之助さんが、オペラの演出を手がけていらしたことを、それまで知りませんでした。この「影のない女」の前にも、パリでオペラ「金鶏」を手がけ、成功を収めたという実績をすでにお持ちだったそうです。

これは是が非でも「影のない女」を観てみたい。

そう思いました。
そして、amazonで検索し、「影のない女」のDVDを発見。

ところが…


    つづく
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演劇学問・文化・芸術

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