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青い鳥探し~その3 

青い鳥探し~その1
青い鳥探し~その2の続きです。


前回、「私が持っている本(『青い鳥』のドイツ版)の
日本語訳を入手したい」という願望を書きましたが、その後のリサーチで、
チェコ版『Modrý pták』、ドイツ版『Der blaue Vogel』と同様に、挿絵がミルコ・ハナーク(Mirko Hanák)によるもので、
タイトル『青い鳥』という日本語の絵本が存在することを発見。

よくよく調べたら、市立図書館にも所蔵されていたんです。
作者名がマダム・ドルノワでもマダム・ドーノワでもマダム・オーノワでもなく
マリー・ドォルノアと表記されていた為、最初に検索した際に、見落としてしまったのでしょう。さっそく借りてきて読みました。

大まかなストーリーを把握していましたが、やはりディテールを読むと読まないとでは大違い。
ミルコ・ハナークが挿絵に込めた思い、筆遣いの一つ一つ、選んだ色彩などで意図したものがより明確になって、一層この挿絵画家が好きになりました。

ところで、ドイツ版と日本版とで絵が異なる箇所がありました。それは、表紙のカバーに印刷されている絵(表と裏)です。日本版(佑学社)では、本文にも使われている挿絵ですが、ドイツ版、チェコ版は表紙用に描かれたと思われる別の絵です。さらに、本文中の挿絵が、日本版では全体的にぼんやりした印象でした。ですから、結果的にドイツ版を入手してよかったです。

さて、これで日本語訳で読みたいという望みはかないました。
ただ、その2に書いたように、
登場人物の名前がドルノワ夫人の書いた原作と異なるのは何故でしょう?

フランス語の原作『L'Oiseau bleu』のストーリーは
 ・こちらWikisourceより

姫の名前はFlorine(フロリーヌ)、
王はCharmant(シャルマン)、
姉はTruitonne(トリュイトンヌ)<顔に鱒(マス)truiteのような そばかすがあるから>

一方、ミルコ・ハナークの挿絵の入ったチェコの出版社ARTIA社版では
姫の名前はRose(バラ)※日本版で"つぼみ姫"
王はMilan(ミラン)
姉はkröte(ヒキガエル)※日本版で"カエル姫"

ネット検索で情報収集しましたが、異なる理由は明らかになりませんでした。
ここからは、私の推論です

姉の名前がマス→ヒキガエルになったのは、チェコには海がなく、現在は養殖マスを料理することもあるようですが、この本が出版された1970年当時、魚料理は一般的ではなく、子供がマスからソバカスをイメージすることは難しく、翻訳者が子供にも分かりやすいヒキガエル(醜い者のたとえとして)に変えたのでは?

では、姫と王の名は?
フロリーヌそのままでなくとも、「花」の派生語を姫の名前にしたり、同様に王の名前も「魅力的」の派生語を用いればいいものを。姫の名が「バラ」になったのはいいとしても、
何故に王が「ミラン」?

ここで、フランス語をチェコ語とドイツ語に翻訳した訳者を確認すると
Jan Vladislavという人物です。
注意深く確認してみると、私が所持するドイツ版『Der blaue Vogel』では
Marie d' Aulnoy /Jan Vladislav という風に、原作者と同列に記載され、amazonドイツのこの本のページでは
Jan VladislavをÜbersetzer(翻訳者)としてではなく、Autor(著者)として載せています。

この人物はチェコ版Wikipediaにも載っている詩人・翻訳家で、この本の出版後になりますが、憲章77(チェコスロバキアの反体制運動、およびそれを象徴する文書)の最初の署名者の一人だったということですから、言論・表現の自由を求め、1968年の「プラハの春(チェコスロバキアの変革運動)」を支持していたもののソ連率いるワルシャワ条約機構軍による軍事介入でチェコの改革が立ち消えとなり失望し、抑圧されることでさらに自由を求める気持ちが募っていたちょうどその頃に、この本の出版にかかわった、ということになります。

王の名前:Milan(ミラン)は、もしかするとJan Vladislavゆかりの、あるいは有名な人物の名前なのではないか?
急にそんな気がしてきて、「チェコ, ミラン」と検索してみると、思わぬ人物の名前が出てきました。

ミラン・クンデラ(Milan Kundera)Wikipedia

1967年、共産党体制下の閉塞した生活を描いた長編小説『冗談』を発表したチェコスロバキアを代表する作家。改革への支持を表明したことによって、次第に創作活動の場を失い、著作は発禁処分となった。

この作家ミラン・クンデラを、おとぎ話『青い鳥』に登場する王:騙されて醜い姉と婚約してしまい、結婚を断ったために青い鳥の姿に変えられてしまうものの、最後には望むものを手に入れる~
に投影させたのではないか?さらに、塔に幽閉された姫の日々が、ミランが小説に書いた共産党体制下の閉塞した生活の隠喩にもとれます。ストーリーは17世紀のフランスで書かれたものではありますが。

チェコ語もドイツ語もわからぬまま、家のパソコンで暇な時に片手間で情報を集めるだけでは、この本を出版した背景や本来の意図を知ることはとてもできませんが、出版された年、出版された国の歴史、Jan Vladislavのことなどを知れば知るほど、私の憶測が単なる思い込みや推測だけではないかもしれない、と思えてきます。

ある本が出た年に、その国、その都市ではいったいどんなことが起きていたのか?
たとえそれが子供向けの本であっても、今後、その点に留意して読んでいこうと思います。

 ・関連記事君の名は?胸の黄色い小鳥さん
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日記日記

コメント

私も!

オルサさん、やっとやっと書き込みできます!うれしい。
そして「私も!」です(笑)
こういう楽しみは、本当にやめられないですねえ。
20代のころは夢中になってやっていました。
青い鳥なのでお返しは赤い鳥でいきたいと思います。
雑誌「赤い鳥」の中で、鈴木三重吉が不思議の国のアリスを訳しているのですが、アリスの名前は自分の娘の「鈴子」にしています。日本人にはアリスよりも親しみやすい、そして、娘にはアリスになりきってもらいたい、そんな思いがあったのでしょうね。
私は朗読の仕事をしている時、当の鈴子さんに何度かお会いしたことがりました。私は極度の人見知りなので、限られた時間の中で、また師匠を差し置いて話しかけることができずに終わってしまいました。
本当はずっと、「お父さんがアリスをあなたに仕立てた時、どんなお気持ちでしたか?」とお聞きしたかったのですが。
当時の歴史や著名人などを追いかけ、その国を旅する…最高ですね!
私もまた、このような楽しみをしたいと思いますが、しばらくは激動のカイロに身を置き、これまた歴史を体験したいと思っています。

碧さん

文面から察するに、まだカイロにいらっしゃるのでしょうか?1月に「エジプト旅行かばん」にお邪魔して、カイロにいらっしゃることがわかり、心配していました。(コメントを残さず申し訳ないです)ご無事なようで一先ず安心しました。

さて、雑誌「赤い鳥」掲載の不思議の国のアリスの名前が、鈴木三重吉訳では娘 鈴子さんの名前に取って代わり、しかもそのご本人と面識があるなんて!!!

アリスの代わりに日本人の名前が付けられていたということを、何かの本で読んだ記憶がありますが、まさかそのご本人を碧さんがご存じだとは、思ってもみませんでした。

さらに、碧さんが「極度の人見知り」だというのも、俄かには信じられないですね。

ところで、エジプトを舞台にした小説(かつてブログにも書いた「美しいローレット」
http://siccomesiciliana.blog9.fc2.com/blog-entry-459.html

もその一つですね)やエジプトに滞在した作家のエッセイなどいくつか読んできましたが、エジプト人作家の作品を読んだ記憶がありません。北アフリカで言えば、モロッコ出身のターハル・ベン・ジェルーンの小説はいくつか読んでいるのですが。
現代エジプト人作家の作品が、日本語に訳出される機会が少ないということもあるのでしょうが、小説でおすすめなどありましたら、すぐでなくともいいですから、何かありましたら、教えてください!

ノーベル賞作家

私かなり限られた人にしか、私の世界を公開していません。
そうなんですよね~私に会ったことがある人は人見知りだとよく判るようです。
言葉が出てこないのです。
書くのは雄弁ですが(笑)私が会いたいオルサさん。なかなかそう思うことがありません。

ご心配いただき恐縮です。
観光客がたくさん戻ってきていて、とてもにぎやかです。
本当に問題があるのは一部地域のみです。

エジプト人作家ですが、手に入れやすく、映画にもなっているのはナギーブ・マフフーズです。
アマゾンなどで入手可能です。

美しいローレット懐かしい!

碧さん

お奨めのエジプト人作家を教えていただき、ありがとうございました。
こんなにも早く情報が得られるとは思ってもみなかったので大変嬉しいです。
早速読んでみようと思います。

前のコメントを書いた翌日になって、そういえば数年前に確かカイロが舞台のサスペンス系小説を読んだなぁ、という記憶が蘇ってきたのですが、作者がエジプト人だったかどうかがあいまいで、タイトルも思い出せません。ナギーブ・マフフーズの作品の内容をamazonで確認したところ、彼の作品ではないようです。
もしその本が家にあったら、コメントに追記します。

碧さん②

前のコメントに書いた「カイロが舞台のサスペンス系小説」、amazonの購入履歴を探してやっとわかりました。
カイロ出身のアルベール・コスリー著「老教授ゴハルの犯罪」でした。著者はシリア系エジプト人(後フランス国籍)のようです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Albert_Cossery

知りませんでした

これは是非読んでみたいものです。ご紹介ありがとうございました。

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