詩と映画からアート 

最近読み終わり、もう一度読み直そうと思っているのが、

文芸批評をはじめ、映画、音楽、演劇、スポーツの評論や数々の随筆を世に送り出した
今は亡き文筆家、虫明亜呂無 著
女の足指と電話機-回想の女優たち」。

帯には「三島由紀夫、寺山修司、大島渚に絶賛された幻の名エッセイが今、よみがえる!」とあり、ということは、本の出版を待ち焦がれていた熱烈な虫明亜呂無ファンが、今も相当数いるのではないかと、思わせます。

この本は、1960年代~1981年の期間、「映画評論」「スポーツニッポン」「競馬ニホン」「みんおん」といった雑誌に掲載されたエッセイの数々を、新たに一冊にまとめたもの(2009年3月出版)で、副題が「回想の女優たち」とあるように、紙面の多くをお気に入りの女優たちへのオマージュに割いていますが、それだけではなく、映画評論、演劇評論、競馬の話題に「ベルばら」論など話題は多岐に渡り、文中に登場する人物名を少し挙げてみると、女優以外ではプルースト、三島由紀夫、都はるみ、寺山修司、中原淳一、ヴィスコンティ、越路吹雪、ボブ・ディランというように、芸能、音楽、文学、芸術、さらにスポーツなどのジャンルを網羅。
氏の美意識や鑑賞眼、スポーツ理論を基に語られる対象物。たとえそれが私の見たことの無い映画であっても、女優であっても、競技であっても、私が聞いたことの無い音楽であっても、氏が観た、聴いた空間を共有しているように錯覚させ、想像させる描写力がすばらしいです。また、時に鋭利な刃物のような分析や批評、時に情緒のある表現。限られた文字数の中で、端的にしかも読み応えのある文章にうまくまとめられていて、満足度の高い一冊となっています。私が読む前に想像した「熱烈な虫明亜呂無ファンが、今も…」というのも、あながち間違えではないかもしれません。

中には、プライベートなお付き合いのある方を取り上げたエッセイもあり、
親交のあった映画監督 篠田正浩さんと、篠田氏の以前の結婚相手 白石かずこさんとの間に生まれたお嬢さんについて書かれた文章がありました

篠田正浩氏、現在の奥様は女優の岩下志麻さんですが、以前は、詩人 白石かずこさんのご主人だったというのには、驚きました。

というのも、白石かずこさんは、昨年、
詩の風景・詩人の肖像icon」という作品(日本と世界の15名の詩人たちとの交友録、及びアンソロジー)で
「読売文学賞 随筆・紀行賞」を受賞し、新聞で紹介されていたので、私はこの本を購入して、現在も読んでいる最中なのです。

白石かずこさんが選んだ15人の中に、二名の日本の女流詩人が含まれており、一人が、
ユルスナールの「ハドリアヌス帝の回想」の翻訳でも知られる
多田智満子さん、そしてもう一人が、私が好きな森茉莉と親しかった富岡多恵子さん。
このお二人との交流は、詩人として親交があった、というような表面的な関係ではなく、同志のような、お互いの才能と作品を尊敬する一方で競い合うという、刺激し合う関係だったようです。

詩人 吉岡実さんについて語られた追想の中には、
「吉岡実、森茉莉のお二人の先輩に富岡多恵子…、池田満寿夫が、わたしが幼い娘と住む西荻窪、松庵のアパートへたびたび訪れた」とあり、森茉莉(参照サヴァラン好き~その1 )という部分に読んだ当初は反応したのですが、
「わたしが幼い娘と住む」の幼い娘が、篠田正浩氏との間に出来た子供のことだったのかと、今になってやっとわかり、とても不思議な気分になりました。

以前の記事
気になる二人」で、桐原春子さんと熊井明子さんのお二人が、実の姉妹だと知ったときの驚きを書きましたが、それよりももっと複雑で、白井かずこさんの随筆で、想像もしていなかった名前~多田智満子さん、富岡多恵子さん、森茉莉さんと出遭い、虫明亜呂無さんの随筆に、今度はその白井かずこさんと、そのお嬢さんの名前を見つけ、しかも篠田正浩氏との関係を知り、くじ運の悪い私なのに掘れば掘るほど宝物が見つかるような、たまたま乗った電車で父や妹に偶然会った時のような、表現しづらい何ともいえない不思議な感覚を覚えました。

さて、その白井かずこさんのお嬢さん 白石由子さんですが、
女の足指と電話機-回想の女優たち」によると、ニューヨークで美術を学び、ウィーンの国際美術展に入選後、ロンドンのチェルシー美術学校に入学したとありました。

Googleで検索し、彼女の作品の一部を見ることができました。
 ・こちらArtnet
    Yuko Shiraishi(Google 画像検索結果)

英国を本拠地に活動されていたようで、現在はどちらにお住まいなのか、どのような活動をされているのかわかりませんが、母娘のコラボレーション、つまり、白井かずこさんの本の装画を由子さんが手がけられたという作品を見つけ、心が温まるような気持ちになりました。
 ・こちら現れるものたちをして

[追記]虫明亜呂無のエッセイ集
仮面の女と愛の輪廻」が、遂に出版されたので、さっそく読み始めています。編者の方に、10月もしくは11月に出版されるということを事前に教えていただいていたので、ここ数週間、ネットショップを豆にチェックしていました。

こちらの方も、非常に充実した内容で、楽しみながら読んでいます。
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コメント

虫明亜呂無 ふたたび

虫明さんの『女の足指と電話機―回想の女優たち』をチェックしていたら、このブログにたどり着きました。素敵なご紹介有難うございます。
お蔭様で、『女の足指と電話機』は、新聞、雑誌などの書評で大きく取り上げられ、増刷が決まりました。さらに、同じ版元から、私の責任編集で、もう一冊、虫明さんのエッセイ集をつくることになりました。今、すでにゲラが出ており、遅くとも11月には刊行されます。
内容としては、虫明さんの自伝的回想、60年代に書かれた三島由紀夫、伊丹十三、円谷幸吉をめぐる見事なポルトレ、岩下志麻、岸田今日子、吉永小百合など日本を代表する女優をめぐる長めのエッセイ、アイリス・マードック、ユルスナールなどの作家論、『マンハッタン』などの映画評など盛り沢山で、密度としては、前著を超えるのではないかと思えます。もちろん、すべて単行本未収録のエッセイばかりです。
さらに、奥様の虫明敏子さんによる虫明さんの思い出を綴った書き下ろしのエッセイがつきます。
どうぞ、ご期待ください。

高崎俊夫さん

編者の方からの直々のお知らせ、ご丁寧にありがとうございます。新たに出るエッセイ集、特に虫明さんの自伝的回想や作家論、さらに奥様のエッセイなどに興味津々です。

遅くとも11月には刊行予定とのこと。大変楽しみです。もちろん購入して、読ませていただこうと思います。

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