青い鳥探し~その3 

  • [2013/01/27 20:52]
青い鳥探し~その1
青い鳥探し~その2の続きです。


前回、「私が持っている本(『青い鳥』のドイツ版)の
日本語訳を入手したい」という願望を書きましたが、その後のリサーチで、
チェコ版『Modrý pták』、ドイツ版『Der blaue Vogel』と同様に、挿絵がミルコ・ハナーク(Mirko Hanák)によるもので、
タイトル『青い鳥』という日本語の絵本が存在することを発見。

よくよく調べたら、市立図書館にも所蔵されていたんです。
作者名がマダム・ドルノワでもマダム・ドーノワでもマダム・オーノワでもなく
マリー・ドォルノアと表記されていた為、最初に検索した際に、見落としてしまったのでしょう。さっそく借りてきて読みました。

大まかなストーリーを把握していましたが、やはりディテールを読むと読まないとでは大違い。
ミルコ・ハナークが挿絵に込めた思い、筆遣いの一つ一つ、選んだ色彩などで意図したものがより明確になって、一層この挿絵画家が好きになりました。

ところで、ドイツ版と日本版とで絵が異なる箇所がありました。それは、表紙のカバーに印刷されている絵(表と裏)です。日本版(佑学社)では、本文にも使われている挿絵ですが、ドイツ版、チェコ版は表紙用に描かれたと思われる別の絵です。さらに、本文中の挿絵が、日本版では全体的にぼんやりした印象でした。ですから、結果的にドイツ版を入手してよかったです。

さて、これで日本語訳で読みたいという望みはかないました。
ただ、その2に書いたように、
登場人物の名前がドルノワ夫人の書いた原作と異なるのは何故でしょう?

フランス語の原作『L'Oiseau bleu』のストーリーは
 ・こちらWikisourceより

姫の名前はFlorine(フロリーヌ)、
王はCharmant(シャルマン)、
姉はTruitonne(トリュイトンヌ)<顔に鱒(マス)truiteのような そばかすがあるから>

一方、ミルコ・ハナークの挿絵の入ったチェコの出版社ARTIA社版では
姫の名前はRose(バラ)※日本版で"つぼみ姫"
王はMilan(ミラン)
姉はkröte(ヒキガエル)※日本版で"カエル姫"

ネット検索で情報収集しましたが、異なる理由は明らかになりませんでした。
ここからは、私の推論です

姉の名前がマス→ヒキガエルになったのは、チェコには海がなく、現在は養殖マスを料理することもあるようですが、この本が出版された1970年当時、魚料理は一般的ではなく、子供がマスからソバカスをイメージすることは難しく、翻訳者が子供にも分かりやすいヒキガエル(醜い者のたとえとして)に変えたのでは?

では、姫と王の名は?
フロリーヌそのままでなくとも、「花」の派生語を姫の名前にしたり、同様に王の名前も「魅力的」の派生語を用いればいいものを。姫の名が「バラ」になったのはいいとしても、
何故に王が「ミラン」?

ここで、フランス語をチェコ語とドイツ語に翻訳した訳者を確認すると
Jan Vladislavという人物です。
注意深く確認してみると、私が所持するドイツ版『Der blaue Vogel』では
Marie d' Aulnoy /Jan Vladislav という風に、原作者と同列に記載され、amazonドイツのこの本のページでは
Jan VladislavをÜbersetzer(翻訳者)としてではなく、Autor(著者)として載せています。

この人物はチェコ版Wikipediaにも載っている詩人・翻訳家で、この本の出版後になりますが、憲章77(チェコスロバキアの反体制運動、およびそれを象徴する文書)の最初の署名者の一人だったということですから、言論・表現の自由を求め、1968年の「プラハの春(チェコスロバキアの変革運動)」を支持していたもののソ連率いるワルシャワ条約機構軍による軍事介入でチェコの改革が立ち消えとなり失望し、抑圧されることでさらに自由を求める気持ちが募っていたちょうどその頃に、この本の出版にかかわった、ということになります。

王の名前:Milan(ミラン)は、もしかするとJan Vladislavゆかりの、あるいは有名な人物の名前なのではないか?
急にそんな気がしてきて、「チェコ, ミラン」と検索してみると、思わぬ人物の名前が出てきました。

ミラン・クンデラ(Milan Kundera)Wikipedia

1967年、共産党体制下の閉塞した生活を描いた長編小説『冗談』を発表したチェコスロバキアを代表する作家。改革への支持を表明したことによって、次第に創作活動の場を失い、著作は発禁処分となった。

この作家ミラン・クンデラを、おとぎ話『青い鳥』に登場する王:騙されて醜い姉と婚約してしまい、結婚を断ったために青い鳥の姿に変えられてしまうものの、最後には望むものを手に入れる~
に投影させたのではないか?さらに、塔に幽閉された姫の日々が、ミランが小説に書いた共産党体制下の閉塞した生活の隠喩にもとれます。ストーリーは17世紀のフランスで書かれたものではありますが。

チェコ語もドイツ語もわからぬまま、家のパソコンで暇な時に片手間で情報を集めるだけでは、この本を出版した背景や本来の意図を知ることはとてもできませんが、出版された年、出版された国の歴史、Jan Vladislavのことなどを知れば知るほど、私の憶測が単なる思い込みや推測だけではないかもしれない、と思えてきます。

ある本が出た年に、その国、その都市ではいったいどんなことが起きていたのか?
たとえそれが子供向けの本であっても、今後、その点に留意して読んでいこうと思います。

 ・関連記事君の名は?胸の黄色い小鳥さん
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青い鳥探し~その2 

年をまたいで「青い鳥探し~その1」の続きです。

マダム・ドルノワ(マダム・ドーノワ)が書いた「青い鳥」
どんなお話なのか?
ドイツ語がわからない為、検索して出てきたのは、

バレエ「眠れる森の美女」(チャイコフスキー作曲)の中に
別のお話である「青い鳥」も挿入され、
青い鳥となった王と姫とが踊るシーンがあるらしく…



これですね!
その原作のストーリーを紹介するいくつかのブログ(あるいはサイト)を見つけました。

例えばAngelさんの書かれた
 こちら「青い鳥」のお話

継母とその連れ子によって幽閉されたお姫様フローラと
遠き国より来る若き王との悲恋。王は青い鳥に変えられてしまうが、
最後はハッピーエンド

というストーリー。
おおよその内容がわかりました。しかし同時に、疑問点もいくつか浮上しました。

その1)お姫様の名前ですが、こちらは「フローラ」
「フロリーヌ」
となっていますが、私が所持する
ドイツ語版「Der Blaue Vogel」では、
姫の名がPrinzessin Rose、つまりバラ姫となっているのです。
王の名前も異なります。

その2)Angelさんによると、原作は「フランス妖精物語」の中の「ロゼット姫」という童話集に入っている

とありますが、これは、「フランス妖精物語」という童話集のなかの「ロゼット姫」という作品 という意味か?
あるいは「ロゼット姫」シリーズのようなものがあり、その内の一つの作品 ということか?
では何故、姫の名前はフローラなのか?
タイトルは「青い鳥」ではなく「ロゼット姫」?

何が何だか、さっぱりわかりません。

さらに検索を進めていくと、フランス文学者・翻訳家の
新倉朗子さんの論文「オーノワ夫人の妖精物語集について」の中で、
「青い鳥」と「ロゼット姫」が、それぞれ別の話として扱われていました。しかも、「ロゼット姫」の備考欄に
「結末のエピソードでヒロインを助ける犬が活躍するモチーフが入っている」とあり、「青い鳥」に犬は出てこないため、明らかに別の話であることが判明。

ということは、先のAngelさんをはじめ、多くのブロガーさんが、勘違いをしている可能性が出てきました。
少なくとも、研究費の助成を受けたフランス児童文学史研究者(新倉朗子さん)が書かれていることが、より真実に近いはずです。

ただ、実際に二つの話を読み比べてみないとわからないですし、できれば、私が持っている本の日本語訳を入手したい。

そんな折、スコットランドの詩人にして翻訳家・民俗学者の
アンドルー・ラング(Andrew Lang)が、『世界童話集 』を編纂しており、


みどりいろの童話集』に「青い鳥」が、


あかいろの童話集』に「ロゼット姫」が収められていることがわかりました。

英語による物語の概要も明らかに。
 ・こちらThe Blue Bird
     Princess Rosette

ただ、やはり姫の名は「フロリーヌ」。


そして急展開…

     つづく
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