コクトーと音羽屋との縁 

今、私が夢中になって読んでいる本があります。

それは、
西川正也 著「コクトー、1936年の日本を歩く」。

そもそもこの本を手に取るきっかけとなったは、10日ほど前に放送されたBS-TBSのスペシャル番組
寺島しのぶ・フランス幻想紀行~藤田嗣治『乳白色の肌』に魅せられて~」でした。

寺島さんといえば、華があり演技力があり存在感もあり、誰もがその実力を認める 当代随一の女優さんですが、そういう人が、こういった紀行番組でどのようなコメントを発するのか、それが是非とも観てみたいというのが、正直なところ、この番組を観た理由です。しかも演じていない時の彼女には、常にいくつかの形容詞がついて回ります。
[梨園に育った][夫が離婚歴のあるフランス男性]etc.

ご主人がフランス人ならば、私たち、フランスの思想や文化が身近ではない日本人とは異なる視点や考え方をお持ちかも?
歌舞伎の美学を知ればこその、独特な美意識をお持ちかも?そういうものが反映されたコメントを期待したい…

そう思って見始め、終わるころには「観てよかった。観て得したな。」そう思えるほど、私の期待を大きく上回る内容でした。

番組は、レオナール・フジタとしてお馴染みの、
フランスで最も有名な日本人画家 藤田嗣治(つぐはる)
の代表作『Nu couché à la toile de Jouy(寝室の裸婦キキ)』<参照寝室の裸婦キキ(google画像)>の『乳白色の肌』の秘密を解き明かすため、寺島さんがゆかりの地を訪ねながら、フランスでの藤田嗣治の実像に迫っていくという内容でした。

さて では、その藤田嗣治の番組が、冒頭に紹介した本と、どう関係するのかといいますと、
藤田は晩年、ジャン・コクトー(Jean Cocteau)と合作の本を作っており、それが番組後半に出てきます。

『Le Dragon des Mers(海龍)』、この本は、コクトーが1936年に来日した後に執筆した「世界一周」の日本に関する文章を抜粋し、藤田が挿絵版画を添えた作品で、前述の西川正也 著「コクトー、1936年の日本を歩く」によると、1955年に出され、出版部数わずか175部だとか。
古書店 夏目書房のサイトに、画像が載っていました。
 ・こちら海龍

その画像、左側の列に歌舞伎役者の顔が描かれたペ―ジをご覧になったと思いますが、
その歌舞伎役者、寺島さんの曽祖父(ひいおじいさん) 
六代目尾上菊五郎の「鏡獅子」だそうですよ。(ちなみに、寺島しのぶさんのお父さんは七代目尾上菊五郎さん)

「八十日間世界一周の旅」の途上、コクトーは、1936年(昭和11年)の5月16日に神戸港に着き、その後、京都、横浜、さらに東京へと足を延ばし、一週間後の5月22日、横浜港から出港し、日本を後にし、次なる目的地アメリカに向かいました。東京からは藤田も同行し、歌舞伎観劇で、六代目尾上菊五郎の演技にいたく感動し、自作の戯曲を日本語訳し、女王の役を是非とも菊五郎に演じさせたいとまで考えたといいます。その夢は実現されませんでしたが、後年、岸恵子さんが別のコクトー作品劇で主演をした際、稽古場でコクトーは「キキュゴロウ(菊五郎)」の名前を連発していたといいます。ただ一度だけ観た六代目尾上菊五郎の演技が、いかにコクトーの心に深く刻まれたことか、それを表すような逸話です。

その六代目菊五郎(音羽屋)のひ孫にあたる寺島さんが、この番組に出演したというのは、製作者側が初めから意図してのことなのでしょうが、寺島さんがフランスの男性と結婚したのは、他の誰かの意図も作為も介在しない偶然のことでしかありません。

しかし、あの世のコクトーと六代目が糸を操り…なんてことが、もし…


まさか!
 
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日記日記

コメント

相変わらず

BSに縁のない生活を送っておりますが、これは見たかったですね!

私は子どもの頃、パステルなんぞという高価なものは買ってもらえなかったので、同居の叔母が飽きて放置した化粧品で絵を描いていました。
藤田の画風はあまり好きではないのですが、あの透明感ある肌を天花粉で出していたと発表されてからと言うもの、がぜん興味を持って見るようになりました。

寺島さん自身がどれほど意識しておられるかは?ですが、彼女の生活や持って生まれたものを考えると、このレポートをするのはとてもふさわしいと思いました。

ヨーロッパ人が受けた東洋の衝撃…フランスに飛び込んだ岸さんがそれを耳にする!それだけでもドラマですねえ。
まさか!まさか!
楽しくなりました♪

碧さん

>化粧品で絵
私は今でも、使わなくなったマニキュアで絵を描きますよ。ほとんど自分の部屋に置いてあるもののデコレーション程度ですが。

小さな子供に、いろいろな種類の化粧品やら筆やら(あとベビーパウダーも)と紙を渡して、好きなものを描いていいよと言ったら、どの化粧品をどのように使い、どういう絵を描くか?姪たちが小さいうちに、やらせてみたかったですね。

寺島しのぶさん、ご懐妊のニュースを2~3日前に知りました。生まれてくるお子さんが、今後どこでどういう教育を受けることになるのか、どういう職業を選択するのか、先のことはまだまだわかりませんが、非常に興味深いですね。

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